みなさん、給与明細書はきちんと発行されていますか?短時間のパートやアルバイトを雇用している個人経営の農園では、「労働時間×時給」の単純計算で済ませてしまい、詳細な給与明細を発行する意識が薄い場合もあるかもしれません。
また、日本人には給与明細を出していても、外国人材には「日本語で書かれた給与明細を出しても難しくて読めないだろうから、あまり意味がない」と考える経営者もいらっしゃるかもしれません。しかし、外国人材も日本人と同じく給与明細を受け取る権利があります。社会保障や住民税、所得税などの控除項目を含む給与明細を、必ず出すようにしてください。
給与明細の説明は義務
登録支援機関や監理団体では、外国人材の方への来日前ブリーフィングで、給与の内容(残業代の取り扱いや休日日数、有給休暇など)や控除項目(社会保障費や税金、会社の寮費など)について説明することが義務付けられています。これらの項目には難しい用語も含まれますが、大半の実習生は、こうした控除や残業代の取り扱いについて事前に知識を得ています。
また、外部の外国人支援サイトにもこれらの情報が多く掲載されています。たとえば、外国人労働者向けの情報を提供している「JP-Mirai」のWebページでは、保険制度や残業代についても詳しく説明されています。
保険制度(https://portal.jp-mirai.org/ja/live/s/money/japanese-insurance-system)
残業代(https://portal.jp-mirai.org/ja/work/s/work-in-japan/overtime-pay)
外国人材は給与明細をしっかり確認しています
「外国人には日本語の給与明細の用語は難しすぎるのでは?」と思う方もいるかもしれません。しかし、彼らは給与の中身に非常に敏感です。
・残業代が正しく払われているのか?
・社会保障費としてどのような控除がされているのか?
これらを正確に把握したいと考えています。むしろ、出稼ぎ感覚の強い外国人材の方が、給与の内訳をしっかり理解しようという意識が高いように思われます。
日本人向けの給与明細と同様の様式で問題ありませんので、必ず発行してください。最近では、スマートフォンで給与明細をスキャンし、翻訳サイトを使って用語を簡単に調べることも可能です。
実例:給与明細の未発行が招いた問題
以前、弊社がかかわったある農園では、「外国人には給与明細の用語が分からないだろう」と考え、半年以上給与明細を発行していませんでした。実習生から「給与明細がなくて不安」という声が上がり、弊社から農園に依頼して、給与明細を発行してもらいました。
その結果、実習生からの指摘で寮費が控除されていなかったことに気付きました。これにより、過去にさかのぼって控除を行う必要が生じ、実習生と農園の間で大きなトラブルに発展しました。
最初から給与明細をきちんと発行していれば、労使双方のチェックにより問題が早期に発見・解決できたはずです。
外国人材に安心して働いてもらうためにも、給与明細をきちんと発行することが大切です。