外国人実習生を毎年受け入れているような農業現場では「メンター制度」の導入が非常に有効です。
一般的に、「メンター制度」とは知識や経験の豊富な先輩社員(メンター)が、比較的経験の浅い後輩社員(メンティ) を個別にサポートする仕組みのことを指します。
単なる教育や指導にとどまらず、仕事上の技術的な支援に加えて、精神的なサポートやキャリア形成の相談役としての役割も担います。
メンター制度のススメ
「うちは自然と先輩が後輩を教える雰囲気ができている」とおっしゃる社長さんもいるかもしれません。しかし、先輩の力量によって後輩の育成結果が大きく左右されていないでしょうか。
弊社でも当初は、誰が誰を指導するかを定めず、自由な雰囲気の中で、先輩が気の合う後輩を教える形をとっていました。ところが、先輩の能力によって後輩の育成に差が生じ、結果的に農作業や商品の質にばらつきが出てしまいました。
そこで、「メンター制度」を導入することにしました。
弊社の場合、必ずしも『先輩』がメンターになるわけではありません。3か月ごとに実施する人事評価で、あらかじめ設定した高い基準をクリアした実習生のみがメンターになる資格を持ちます。そして、実際にメンターに指名された実習生には職能手当を支給し、他の実習生よりも高い給与が支払われる仕組みにしています。
どのような評価項目や基準を設けるかは、それぞれの経営体によって異なります。重要なのは、メンターに求める能力や役割を誰が見ても同じ解釈ができるように明文化することです。
たとえば、弊社では「作業基準をしっかり理解していること」を、メンターに求める能力のひとつとしています。これにより、農作業の質を一定に保つことができるようになりました。
「新しく入ってきた外国人実習生の仕事の覚えがわるい」と感じるのであれば、それは「教える側」に原因があるのかもしれません。「先輩だから教えられる」と考えるのは誤りであり、メンターとなる人材の育成が必要なのです。
ぜひ、個人の能力をしっかりと把握した上で、メンター制度の導入を検討してみてください。メンターに選ばれた人も、やりがいを感じてますます成長し、結果としてチーム全体の底上げにもつながっていきます。