農業は天候に大きく左右される職業です。生育状況に大きな差が生じることもあり、どれほど事前に作業計画を立てても、天候に応じて作業内容を変更せざるを得ないことが常に起こります。場合によっては、やむを得ず残業や休日出勤になってしまうこともあるでしょう。今回は、そうした前提を踏まえたうえで、実習生など外国人材にとっての「休日」について考えてみたいと思います。
農業と「休日」
国内外を問わず、労働者にとって「休日はいつか」「休日の日数はどれくらいか」は大きな関心ごとのひとつです。農業分野は、「休みが少ない」というイメージが強く、若者が農業を敬遠する要因のひとつにもなっています。
こうした背景を受けて、近年の労務セミナーでは「農業でも休日を増やしていきましょう」といった話をよく耳にするようになりました。実際に、休日が年間100日を超えることを積極的にアピールする農業法人も増えてきています。
外国人材にとっての「休日」
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「休日が多い」=「良い職場」?
しかし、外国人材にとっての「休日」は、また別の視点から考える必要があります。
たとえば、休日が多くなれば就労時間が短くなり、毎月の給料は減る傾向にあります。給与よりも休日を重視する人にとっては問題ないかもしれませんが、稼ぐために来日している外国人材にとっては、手取りが減ることを嫌がる傾向があります。
多くの人にとっては出稼ぎが目的であり、限られた期間内でどれだけお金を貯められるのかが最大の関心事なのです。
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若い世代が重視する「生活の質」
では、「休日が少ない方がよい」のかというと、そう単純な話でもありません。
少し前のインドネシア人実習生には「出稼ぎ」の意識が強かったものの、近年のインドネシア経済の成長に伴い、若者たちは「日本の生活を楽しむ」ことにも価値を見出すようになっています。
20年前と比べると、現在の若者たちは余暇の過ごし方をより重視しており、休日があまりに少ない現場は敬遠される傾向があります。
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学びのために「固定休日」が必要な人たち
また、インドネシア人実習生に限らず、「特定技能」で働く人の中には、「特定技能2号」の試験合格を目指して勉強している人も多くいます。
特定技能2号を取得するには、日本語能力試験N3に合格するレベルの語学力が必要とされており、そのために余暇の時間を使って日本語を勉強したいというニーズがあります。
このような場合、単に「休日が多いか少ないか」ではなく、「毎週決まった曜日や時間に休めるか」が重要になります。日本語教室に通うには、継続して決まった曜日や時間に休めることが前提となるからです。
さらに最近では、インドネシアの大学の通信課程に在籍しながら日本で働く若者も増えており、土日に通信の授業を受けるため「週末の休み」が必須となるケースもあります。
こうした背景から、外国人材にとっては「年間の休日日数」だけでなく、「毎週きちんと休めるのかどうか」も職場選びの重要な基準になっているのです。
休日の変更や休日出勤は慎重に
「今日は雨だから休みにします」や「仕事が遅れているから、今度の日曜日は出勤ね」などと休日を安易に変更していませんか?また、休日出勤させた際に、法定の35%増しで賃金を支払っていないことはありませんか?
もちろん、外国人材の事情は一人ひとり異なります。しかし、「急に休みを削って働かせても大丈夫だろう」と軽く考えるのは危険です。
たとえ話し合いで決めた場合でも、インドネシア人には「目上の人に反論しない文化」があるため、実際には社長の指示に従っていても、内心では納得しないまま休日出勤しているケースもあるのです。
離職を防ぐために、価値観に合った制度設計を
せっかく優秀な人材に来てもらっても、休日をめぐるトラブルで離職につながってしまってはもったいないことです。
それぞれの価値観を尊重しつつ、企業活動にも支障のない「休日制度」をぜひ整備していってください。