技能実習や育成就労とは異なり、特定技能人材には 「いつでも転職できる」 という特徴があります。
この点について、経営する側にとってリスクが高いと感じる方もいるかもしれません。
しかし実際には、転職にもいくつかのパターンがあり、事前に把握しておくことで適切に対応することが可能です。
今回は、弊社がこれまで受け入れてきた特定技能人材の事例をもとに、転職への対応のポイントをまとめてみたいと思います。
特定技能人材の転職には2つのパターンがある
特定技能人材の転職は、大きく次の2種類に分けることができます。
この2つは性質がまったく異なるため、それぞれの特徴を理解しておくことが大切です。
-
「計画的な転職」
特定技能制度では、最大5年間日本で就労することが可能です。しかし、雇用契約は最長でも3年間という決まりがあるため、その後も就労を希望する場合は、
・契約更新・他社への転職のいずれかを選択することになります。
雇用契約満了後の転職が、あらかじめ労使双方に理解されているケースが「計画的な転職」です。
弊社では、登録支援機関および有料職業紹介事業者の認定を受けているため、特定技能人材の採用時から、
・自社での再雇用・将来的な他社への転職の両方を視野に入れながらキャリア相談に乗っています。
(なお、他社への人材紹介は、職業紹介の許可がなければ行うことができないので注意が必要です。)このような体制を整えることで、特定技能人材も
「雇用契約が終わったらどうしよう」
という不安を感じることなく、安心して仕事に集中することができます。
また、弊社で運転免許を取得した人材や機械作業に慣れている人材を紹介できるため、転職先の農家からも喜ばれるケースが多くあります。
一般的には、農家が直接紹介を行うよりも、登録支援機関を通じて転職するケースが多いでしょう。
そのため、特定技能制度の最大期間(5年)より短い有期雇用を予定している場合は、あらかじめ登録支援機関と相談し、本人の希望に応じて転職先について話し合っておくことが大切です。
-
「突然の転職」
もう一つが、特定技能人材から突然切り出される転職です。
弊社の経験では、
「転職について相談したい」
と言われた時点で、すでに次の就職先が決まっているケースが多く見られます。
引き止めたいと思うかもしれませんが、かなり好条件を提示しない限り難しい場合が多いでしょう。
これまでの経験から、「突然の転職」は主に次の4つの理由に分けられます。
突然の転職で多い4つの理由
-
親族・恋人の近くで働きたい
会社との関係が良好であっても、この理由で転職するケースは少なくありません。
母国の家族や恋人が技能実習生や特定技能として別の地域に来日した場合、このケースが発生しやすくなります。また、SNSなどを通じて日本で恋人ができるケースもあります。
このようなケースは正直なところ防ぎようがありません。突然、退職を申し出て転職していくことになります。
ただし、会社との関係が悪くなければ急にいなくなることは少なく、業務引継ぎの期間を設けることは可能です。場合によっては、新しい特定技能人材の採用・来日まで待ってもらえることもあります。
頭ごなしに拒否してしまうと関係が悪化し、突然いなくなってしまう可能性が高まります。転職に理解を示しながら、業務引継ぎについても協力してもらうことが大切です。
-
人間関係や会社に不信感がある
このケースでは、突然いなくなることがあります。
給料日の後、急に退職の連絡が来たり、SNSで退職届が送られてきたりすることもあります。
この場合、業務引継ぎは絶望的ですし、新しい人材が来るまで少ない人数で業務を回すことになりかねません。
このような事態を防ぐためには、日頃から十分にコミュニケーションを取り、待遇や人間関係に問題がないか確認することが重要です。
登録支援機関が遠方にある場合、このような問題に気づきにくいこともあります。
支援費の安さだけで選ぶのではなく、特定技能人材としっかり連絡を取っているかどうかで支援機関を選ぶことも重要なポイントになります。
-
他社からより良い条件を提示された
このケースでは、さらに良い待遇を提示できれば転職を防げる可能性が残っています。
待遇改善が難しい場合でも、話し合いによって退職時期を調整できるケースがあります。業務引継ぎや次の人材確保に必要な時間を考慮しながら、本人の希望とすり合わせを行いましょう。
また、来日時の本人や親族の借金が大きく影響する場合もあります。借金の返済を優先し、より良い条件の会社への転職を急ぐことがあるためです。
信頼できる登録支援機関であれば、借入状況を把握している場合もあるので、考慮に入れておきましょう。
-
もともと希望していた業種がある
このケースでは、採用時の面接や履歴書での確認が非常に重要になります。
農業経験がなく、農業教育も受けておらず、家族も農業に携わっていない方が「農業が好きです」と言って応募してくる場合、日本で就職できれば業種は何でもよいと考えている可能性もあります。
その場合、チャンスがあれば他業種へ転職したいと考えているので、要注意です。
信頼できる登録支援機関や現地送り出し機関を通じて採用することで、このようなリスクを減らすことができます。
転職を防ぐためにできる3つのこと
特定技能人材の転職を完全に防ぐことは難しいですが、リスクを減らすことは可能です。
そのためには、
が重要です。
こうした積み重ねが、特定技能人材が安心して働き続けられる職場づくりに繋がります。
結果として、それが会社にとっても安定した人材確保につながっていくはずです。
転職を前向きに捉える視点も大切
転職というと、どうしてもマイナスのイメージを持ってしまい、つい感情的に反応してしまうこともあります。しかし、特定技能人材にとっても、自分のキャリアや人生を考えたうえでの大切な判断です。
基本的には、その選択を応援できる姿勢を持ちたいものです。
業務引継ぎや次の人材確保までの時間という課題がクリアできれば、その転職は会社にとって必ずしもマイナスのものではありません。
実際、転職の話し合いの後、最後まで責任を持ってこれまで以上に一生懸命仕事に取り組む特定技能人材の姿を、私はこれまで何度も目にしてきました。
特定技能人材のためにも、会社のためにも、転職には慌てず、落ち着いて対応できるようにしておきたいですね。
