突然ですが、視力検査の様子を思い浮かべてみてください。
片方の目を覆い、6メートルほど離れた場所から、表に書かれたさまざまなアルファベットを上から順番に読むーー
このようなイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、多くはないはずです。
日本で一般的に行われている視力検査とは、少し異なります。
視力検査に戸惑うインドネシア人実習生
日本の健康診断で一般的に行われているのは、丸い輪の一部が切れている記号を見て、切れ目の方向を答える「ランドルト環」による視力検査です。日本人にとっては、小学校から繰り返し経験してきた身近な検査方法でしょう。
しかし、実はこの視力検査の方法は世界共通のものではありません。
例えば、インドネシアで一般的に使われることが多いのは、「スネレン視標」と呼ばれる、アルファベットを読み上げる方式の視標です。大きさの異なるアルファベットを順に読んでいく形式で、アルファベットに慣れていれば直感的に答えられます。オランダの眼科医によって考案された方法で、欧米諸国で主流の検査法とされています。
しかし、検査担当者が「ランドルト環」による視力検査を「誰でも知っているはず」と思い込んでしまい、説明がほとんどなされないまま検査が進んでしまうことがあります。その結果、実習生が正しく答えられないというケースが起こります。
私自身、実習生の外国免許切り替えに付き添った経験がありますが、たまたま席を外している間に視力検査が行われたことがありました。その実習生はランドルト環での検査経験がなく、回答方法が分からないまま検査を受けた結果、「見えていない」と判断されてしまいました。本来は視力に問題がないにもかかわらず、このような評価になってしまうのは避けたいところです。
また、農園の健康診断の際にも、視力検査そのものの経験がない実習生がいました。その際は、事前にルールを説明することで、スムーズに検査を受けることができました。
インドネシアの学校健診は全国一律ではない
インドネシアでは、小学校から大学までの健康診断の実施方法や内容が全国で統一されているわけではありません。地域や学校によって内容が異なり、そもそも視力検査自体を行わないケースもあります。
「丸の空いているほうを答える」と一言添える
もし実習生の視力検査の場に立ち会う機会があれば、ぜひ基本的なルールから説明してあげてください。
といった点を、最初に伝えるだけで実習生の不安は大きく軽減されます。
特に「右・左・上・下」を日本語で瞬時に答えることに戸惑う場合があります。とっさに日本語が出てこないだけで、見えていないわけではありません。口頭での回答が難しそうであれば、「指で示してもいいですよ」と促してあげてください。
「日本の当たり前」が「世界の当たり前」とは限らない
視力検査の方法も、「日本では常識」であっても「世界共通」とは限りません。
実習生が戸惑っている場面に出会ったとき、「なぜこんなことも知らないのだろう」と考えるのではなく、「説明が必要なことかもしれない」と立ち止まってみる。その姿勢が、円滑な受け入れの第一歩になります。


